寺社仏閣のような歴史がある建物でない限り、どのような建物でもいずれは取り壊される時がやってきます。
解体工事とは、その名の通りに家屋や建物などを解体する工事を指します。
今回は、その内容や工事を行う際に必要な許可や届出、気になる費用などについて、詳しく解説していきます。
解体工事の対象物となるのは、家屋だけではありません。
アパートやマンション、工場や倉庫など、建物の種類は豊富です。
さらに、リフォームやリノベーションを行う際の、家の中の部分的な取り壊しも解体工事の一種です。
解体工事は、建物が木造か鉄骨造かによって、工事内容や工事の流れは大きく変わってきます。
例えば木造の家屋の場合は、最初に屋根瓦、次に内装材を撤去します。
その後、重機を使用しながら可燃物と不燃物を分別し、建物本体を取り壊していきます。
これに対してマンションなどの大きな鉄骨造の建物は、はじめから大型の重機を使用して鉄骨などの部材を溶断し、建物の倒壊に注意しながら作業を進めなければいけません。
木造と鉄骨造では、解体に使用される重機も必要になる知識や技術も違えば、作業上の注意の仕方も異なります。
また、建物を解体する時には、その周辺にある小屋やカーポート、塀や庭木や庭石など様々なものも一緒に取り壊して撤去しなければいけません。
解体工事を行う時に気になるのが、どのくらいの費用がかかるのか?ということでしょう。
解体費用は建物の構造や大きさである程度決まります。
解体費用の相場は坪単価で表されることが多く、あくまでも目安ですが、木造だと坪4~5万円、鉄骨造だと6~8万円となっています。
坪は約3.3058平米で、木造住宅の延床面積が100㎡(平米)とした場合は、およそ30.25坪です。
また、前記した相場はあくまでも上屋のみの金額で、地階などがある場合は2倍以上になるケースもあります。
敷地内に塀や小屋や庭木などがあれば追加料金となり、トータルの費用が高くなるでしょう。
解体を依頼する業者によっても解体費用はかなり異なりますので、提示した相場価格を参考にして、1社ではなくできるだけ多くの業者から相見積りをとり、慎重に比較することをおすすめします。
解体工事を行うためには許可が必要で、無許可で工事を行うことはできません。
必ず「建設業許可」か「解体工事業登録」のいずれかが必要となります。
ただし、「解体工事業登録」は建設業許可に比べると許可申請は簡単ですが、解体工事のみを許されたものです。
建築工事はできませんし、請け負うことができる工事金額も500万円未満に限定されます。
一般的な家屋の解体工事であれば、ほとんどは500万円未満で収まりますが、鉄骨造の大きなマンションやビルなどの解体は500万円を超える工事が多くなるため、この許可だけでは解体工事を行うことはできません。
また、解体工事を行うことにより必ず廃棄物が発生します。
解体業者が廃棄物の処理を行う場合は、「産業廃棄物収集運搬業」の許可が必要となります。
解体工事に伴い、現場・状況によっては下記の資格も必要になる可能性があります。
必要な資格 |
工事現場の状況や種類 |
足場の組立て等作業主任者 |
5m以上の高さがある足場の組立てや解体を行う場合 |
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者 |
高さ5m以上の鉄骨造建築物の組立て・変更・解体を行う場合 |
コンクリート造の工作物の解体作業主任者 |
高さ5m以上のRC造建物の解体・破壊を行う場合 |
地山の掘削作業主任者 |
2m以上の地山の掘削作業を行う場合 |
特定化学物質等作業主任者 |
アスベストを取り扱う場合 |
解体工事には法律によって細かい決まりがあります。
上記に示した工事現場の状況などによって、必ず現場に有資格者を作業責任者として配置しなければいけません。
ちなみに、上記の表の中の資格はすべて労働安全衛生法に定められた国家資格です。
他にも工事内容によって必要とされる資格がいろいろあります。
2015年に公布された「建設業法施行規則の一部を改正する省令」により、資格要件の見直しが行われたことから、特殊な工事を請け負う場合には十分な注意が必要となります。
自宅の建て替えなどで家の解体工事を行う場合は、電気、水道、ガスなどのライフライン停止や復旧などの手続きを行わなければいけません。
さらに工事の内容や状況によってその他にも様々な届出や申請が必要となります。
必要な届出・申請 |
届出・申請の期限 |
ライフラインの停止 |
工事着手の前日まで |
アスベスト除去の届出 |
工事着手の14日前 |
建設リサイクル法に関する届出 |
工事着手の7日前 |
道路の使用許可申請 |
工事着手の前日まで |
建築物除去届 |
工事着手の前日まで |
建物滅失登記申請 |
工事完了後1か月以内 |
家の解体工事を行う際には、主に上記の届出・申請が必要となります。
「アスベスト除去の届出」や「道路の使用許可申請」などは必要ないケースもありますが、なかなか自身で判断することは難しいです。
ライフラインの停止を除けば、解体工事をお願いする業者や第三者に委託することができますが、それぞれ費用が発生します。
例えば「建物滅失登記」を土地家屋調査士に委託する場合は、3~7万円程度の費用がかかりますので、できる限り費用を節約したいのであれば、自分で手続きを行うという手段も選択できます。
建物を取り壊す解体工事は、建物の構造によって手段も方法も使用する重機や工法なども変わってきます。
さらに、建物の周辺にある小屋や塀などの取り壊しや撤去が必要になることもよくあります。
解体工事を行うためには「建設業許可」か「解体工事業登録」が必要で、廃棄物を処分するためには「産業廃棄物収集運搬業」の許可もなければいけません。
現場の状況などによっては、国家資格の有資格者を作業責任者として現場に配置しなければいけません。
また、解体工事を行う前には電気や水道などのライフラインを停止させる以外にも、様々な届出が必要となります。
面倒な手続きすべてを業者任せにすることもできますが、解体工事には法律に関わる事項もたくさんありますので、工事前には最低限の知識を得ておくことをおすすめします。
気になる解体費用は、解体業者によって大きく異なることもよくありますので、1社に限定するのではなく、複数社から相見積りをとって慎重に比較することをおすすめします。